汁物でつなぐ沖縄の知恵とぬくもり
このたび私たちは、「沖縄文化食堂」のマスターブランドのもと、汁物専門店である『沖縄汁物食堂 かなえ』をスタートいたしました。
「かなえ」は、“沖縄の汁物に込められた文化・知恵・あたたかさ”を、現代の暮らしに寄り添うかたちでお届けする食堂です。かつて沖縄の家庭や食堂で当たり前に受け継がれていた滋味深い一椀を、東京・首都圏という“アウェイ”の地であらためて伝えていく。これは、ローカルフードが衰退する時代にあえて挑む、私たちにとって小さくも大きな一歩です。

店名「かなえ」に込めた想い
「かなえ(鼎)」とは、古代中国において祭祀や調理に用いられていた三本脚の青銅の器のこと。そこには、肉や野菜をじっくりと煮込み、恵みを分かち合う文化的象徴としての意味が込められています。
本ブランドを立ち上げた私たち三名は、それぞれ異なる分野で沖縄食文化と向き合ってきました。その三つの経験と知恵を一つに集めて生まれたのが「沖縄汁物食堂 かなえ」です。三本脚の鼎が安定して支えるように、私たち三人のバランスがこの店の土台となっています。

また、古典に登場する「鼎の軽重を問う」という言葉のように、私たちは今こそ沖縄の食文化が問い直されるべき時代だと考えています。かつて地域の台所であった食堂が次々と姿を消していくなか、私たちはその価値と本質をもう一度見つめ直し、“汁物”というシンプルながら深い入口から再び文化を伝えていきたい。そんな覚悟を込めて、あえて首都圏という舞台での挑戦を選びました。
さらに「かなえ」という響きには、運営会社「香那ホールセール」の“香那”にも通じる親しみを込めています。
メニューコンセプト:一椀に込める、沖縄の生活文化
沖縄の汁物は、単なる「汁もの」ではなく、それ自体が主菜となる、身体と心に働きかける文化的料理です。
どの一品も、それぞれの時代、行事、体調、家族の風景とともに存在してきました。
- 「みそ汁」は、島豆腐や豚肉、卵、野菜などがたっぷり入った、“食べるみそ汁”。朝食にも、疲れた夜にも、栄養バランスのとれた滋養の一椀です。
- 「いなむどぅち」は、白味噌仕立ての祝い汁。ハレの日にふさわしい優しくも奥深い味が、食卓を和ませます。
- 「ソーキ汁」や「てびち汁」は、骨付き肉をじっくり煮込んだコラーゲンたっぷりのご馳走。身体の芯から温めるような深い旨味が特徴です。
- 「ゆし豆腐」は、固まる前のふわふわ豆腐をそばだしで仕立てた、滋養と癒しの定番。ダイエット中や運動後のケアにも。
- 「中味汁」や「骨汁」は、祝い事やスタミナ回復に選ばれてきた伝統の一杯。特別な日や身体を整えたいときにぴったりです。
- 「イカ墨汁」は、海人(うみんちゅ)たちの知恵が詰まった漆黒のスープ。滋養強壮とデトックスを兼ねた一椀です。
私たちはこれらの汁物を、「栄養」や「便利さ」だけでなく、文化や風土の記憶ごとお届けしたいと考えています。
それはまさに、「沖縄文化食堂」のスピリットを継承する「かなえ」ならではの使命です。

おわりに
一杯の汁物に込められた沖縄の記憶と知恵を、
忙しない日々の中に、ほんのひとときのやさしさとしてお届けしたい。
「かなえ」は、そんな願いとともに、今日も丁寧に出汁をひいて、椀を整えて、皆さまのご来店をお待ちしています。
